Google-Bard-から見るチャットAIの優位性とChatGPT/Bingとの差別化ポイント

前回のこちらの記事では、MicrosoftがChatGPTを開発したOpenAIに1兆円規模の投資を行うことによって、Microsoftの検索エンジン「Bing」がどのようになっていくのか?という内容を書いてみた。

その記事を書いている最中に、チャットAIが実装された「Bing」がリリースされたというニュースが飛び込んできたもんだから、これまでの「ググる」という文化?から大きく流れが変わる可能性があるかもしれない状況に。

そうこう言ってるうちに、今度はGoogle が検索エンジンにチャットAIを実装したとの発表が・・・

2022年11月にChatGPTが登場してからわずか3か月で、またまた世の中を大きく変えていくターニングポイントとなるような出来事が起こり始めている

今回の記事では、Google が発表したチャットAI実装の新しい検索エンジン「Bard」の簡単な紹介から、今後Google はどんなことを考えているのかを「Bard」が発表された「Google presents : Live from Paris」の動画(2/8配信)から、いろいろと読み取っていこう。

先行するMicrosoftと遅れを取ったGoogle

ChatGPTの登場~Bingへの実装

2022年11月にOpenAIが「ChatGPT」を発表。

「ChatGPT」の利用者は、これまでのどのSNSよりも早い勢いで登録者が急増し、昨年末からはテレビでも多く取り上げられるくらい「ChatGPT」が話題になっている。

ChatGPTの何が凄いのか? についてはこちらの記事でChatGPT本人に聞いてみた内容の記事を書いたので合わせて読んで欲しい

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またMicrosoftがChatGPTを開発しているOpenAIの設立当初から大きく関わっており、2023年1月には更に1兆円規模の追加出資をするというニュースがでた。

Microsoftは独自の検索エンジン「Bing」を持っており、このBingにChatGPTが搭載されるのでは?という話題が多くなってきた2月上旬、ChatGPTよりも強力で検索用にカスタマイズされたAIが搭載されている「Bing」の発表があった。

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Googleが「Bard」で対抗

こんな状況になってきたもんだから、これまで検索エンジンをほぼ独占していたGoogleもさすがに危機感を持っていた。

ChatGPTの出現によりこれまでの検索エンジンの在り方を根底から覆す可能性があるとして、Google社内にCode Red(非常事態宣言)を出したというニュースも多く出回っている。

確かにChatGPTの登場によって世界中の多くの人がAIが身近になったと感じただろうし、今後のあらゆる場面で「AIと人間が共創する」シーンをイメージし始めたのではないかと思う。

このAIに関して、GoogleはMicrosoftに完全に遅れをとったことから、GoogleもチャットAIが実装された検索エンジン「Bard」をリリースしたという流れになったということである。

GAFAMの中の2社がAIを舞台にした激しい競争を繰り広げる状況となり、まさにGoogleが危惧していたとおり「検索エンジンの在り方を根底から覆す可能性がある」という、ユーザーにとっては非常に面白い状況となってきた。

GoogleのAI検索エンジン「Bard」

チャットAI実装では「Bing」とほぼ同等か

「Bard」が発表された「Google presents : Live from Paris」では「Bard」の画面イメージがデモンストレーション形式で紹介されている。

実際に使っている画面のデモを見た感じでは、Microsoftの「Bing」とあまり多きな差がないようにも見えた。

見た目はもちろん異なるが、これまでの検索キーワードではなく自分が知りたい文章そのものを入力すると、その内容を理解した上で回答が返ってくる。

この点は「ChatGPT」とほとんど機能的には変わらず、回答結果から関連リンクへ飛ぶという検索エンジンとの連動の点では「Bing」のそれとほぼ同等の機能になっているように見えた。

画面イメージなど実際のデモの様子は、こちらの動画でチェックしてみて欲しい。

Googleがリリースすることで一気に浸透する?

ChatGPTが昨年末から世界中で話題にはなっており、日本でもテレビで紹介はされたものの、まだ実際に使ったことのある人は少数だろう。

新たにOpenAIにログインしてChatGPTを日常的に仕事に使ったりしている人は更に少ないかと思う。

また「Bing」という検索エンジンに実装したとはいえ、Bingのシェアはかなり低く(一桁前半くらいのパーセンテージ)、一般の人がBingを使って何かを調べたりする機会は2023年1月時点ではほぼないと言っても過言ではなさそうだ。

そんな状況で検索エンジンのシェアの9割以上を占めるGoogleが、このAIを実装した検索エンジンをリリースしたらどうなるだろうか。

言わずもがなかもしれないが、世の中の人々に一気に浸透していくのではないかと想定される。

もちろん機能は実装したとはいえ、これまでと同じキーワードで検索する使い方をする人はまだまだ多いとは思うが、次第にチャットでそのまま質問したら回答が返ってくる機能を使いはじめ、何年先になるのかわからないが、これまでの「キーワード検索」という概念がなくなっているかもしれない。

チャットAIの優位性・有用性

先ほどの動画の中でとても興味深い内容だったのは、チャットAI実装の検索エンジンの価値について話されている点だ。

「NORA」とは「No One Right Answer」の略だそうで、「ググる」をしてもヘアーサロンやインテリアのショップが出てくるだけでこのワードに合致する検索結果が出てこないので、おそらくGoogleの社内用語的なものではないだろうか?

この見出しにも書いたが、「チャットAIは「NORA」を解決する手助けになる」 という点で価値があるということは、はーなるほど と思った。

チャットAIは「NORA」を解決する手助けに

チャットAIの価値なんて書き方をするとわかりにくいが、要はチャットAIの検索はどんな場面で役に立つのかということ。

例えば、「日本の総理大臣は誰ですか?」といった ”答えがわかっている質問” をチャットAIに出したところで、これまでのキーワード検索とは何ら変わらない回答が返ってくる。

ここではチャットAIの大きなアドバンテージはないように思える。

だが「NORA」に関する質問、要は “答えがない質問”  “誰も正解を持ってない質問” をしたときに、チャットAIの優位性・有用性が出てくる。

例えば、こちらのサイトに「「YES/NOでは答えられない、70の質問」。アナタならどう答える?」という記事があり、1番目に書かれていた以下の質問をChatGPTに投げてみた。

ChatGPTはちゃんと「誰も正解を持ってない質問だ」ということを認識しており、個人的な選択に基づくものだという回答を返してきた。

だが質問に対しての回答として、誰かを選ぶ際の基準や選択肢のヒントを提示してくれている。

更に具体的に提案を依頼してみると、以下のような回答が返ってきた。

あくまで個人の好みやスタイルによるということを前置きした上で、4名の偉大なミュージシャンを候補として挙げてきた。

当然かもしれないが、この4名はとても妥当な・無難な選択をしてきた感じであるけれども、このように具体的な案を提示してくれることで、自分に当てはめたときのイメージが湧いてくる。

この例のように「誰も答えを持ってない」ような問い合わせ(クエリ)をチャットAIに投げて、返ってきた回答から更に突っ込んだ問い合わせを繰り返すことで、具体的なイメージを持つことができ、自分の思考を整理して深めていくことができる。

これは一例に過ぎないが、このような自分の思考の手助けになってくれるような使い方をすることが、チャットAIの優位性や有用性になってくるのではないかという、今回のGoogleの動画を見て非常に共感を得た内容であった。

Googleが目指す検索エンジン

Googleが目指す検索エンジンの方向性や差別化のポイントなどが説明されていた。

ここも非常に興味深い内容だったので、自分なりの解釈にて解説していこうと思う。

Multi Search:画像や動画による検索

ここはGoogleが最も差別化したかったポイントではないかと思うところで、今回のプレゼンの冒頭にこの説明がされている。

「Search Your Screen」「If you can see it , you can search it」というフレーズを並べて説明しているとおり、見たものをそのまま検索できるようになるということ。

例えば何かの動画を見ているときに、その動画内に出てくる場所が気になったとする。

ユーザはその画面をキャプチャし、その画像をそのまま検索ボックスに入力するとその場所に関する情報が回答として返ってくる。

また何かの画像や動画を見て、その画面に表示されているモノの名前が思い浮かばないとき、名前を知らないときなどにも、その画像をキャプチャして検索ボックスに投入すれば回答が返ってくる。

おそらくGoogleレンズなどと連動して、この画像や動画を用いた検索があらゆるシーンでできるような機能が出てくるのではないかと思われ、ここはGoogleの優位性を活かした機能で大きな差別化が出来る点ではないかと思う。

GoogleMapとの連動

またGoogle Mapとの連動に関しての紹介もあったが、これは今回のAI検索の部分がどのように活用されているのかがイマイチわからなかったところではある。

これまでにも機能としてあるARレンズのような使い方をGoogle Mapと連動して検索できるというようなことが紹介されているのだろうけども、この部分はあまり大きなインパクトは受けなかった。

ただチャットAIが返してきた回答とGoogle Mapが連動していたり、Googleの画像検索とも連動していたりして、要はこれまでリリースしてきたGoogleの様々な機能と連動していけるという点が優位性にもなってくるところかと思う。

言葉に縛られる必要はない

ChatGPTはあくまでテキストによるチャットAIとして現時点ではリリースされているが、Googleはこれまでリリースしてきた様々な機能と連動させることにより、ChatGPTにはない優位性や有用性を打ち出してきた感じである。

検索ボックスにキーワード・単語を入力する必要はなく、1つの検索方法に縛られる必要はない。

この点が現時点2023年2月時点のGoogleの優位性や有用性の大きなポイントになってくるかと思うが、この先「Bing」がどのような機能を打ち出してくるのか、非常に楽しみなところである。

まとめ

今回はGoogleが新たに開発したAIチャットを実装した「Bard」に関するプレゼンテーション動画の内容から、既にチャットAIでは先行している「ChatGPT」やマイクロソフトの検索エンジン「Bing」との差別化のポイントなどを解説してきた。

まだこのような発表があったばかりで、具体的に一般ユーザーが使えるようになってからでないとわからない部分も多くありそうだが、今後の検索エンジンやチャットAIの方向性を見る上では、非常に大きなターニングポイントとなるようなリリースになってくるのではないだろうか。

今後もこのあたりの動向は随時記事にしていこうと思うので、ちょくちょくチェックしてみて欲しい。